研究概要 |
[目的]ヒトにおける体温調節能には,暑熱反応と寒冷反応があり,これらの暑熱・寒冷曝露がヒトの体温調節能に与える影響に関しては,ヒトにおいて交感神経活動を介しての研究は少ない.本研究においては,ヒトにおいて汗腺・末梢皮膚血管支配の交感神経活動である皮膚交感神経活動をマイクロニューログラムにより直接記録し,特に局所・全身の温熱曝露時における核温と皮膚交感神経活動のうちの血管収縮神経活動成分との関係を時系列的に解析した.[対象と方法]研究の目的と内容に関する詳細な説明を受けた後,被験者となることを承諾した健康男性14名(21.6±0.6歳,局所)および18名(22.5±0.8歳,全身)を対象とした.被験者を人工気候室内に仰臥位にさせ,脛骨神経および腓骨神経からタングステン微小電極を直接刺入することにより,皮膚交感神経活動を同定し,記録した.同時に皮膚血流量をレーザードプラー血流量計,発汗量をカプセル換気法,皮膚温,核温としての鼓膜温を記録した.局所加温と全身加温により温熱曝露の神経性入力と対流生入力を増加させ,核温と皮膚交感神経活動の関連を解析した.[結果]局所加温時においては,4.0±0.6分遅れて皮膚交感神経活動の抑制とともに皮膚血流量の増加を招き,11.3±1.3分の遅れをもって鼓膜温が下降した.血管収縮神経活動の抑制率と,核温の低下までの潜時,核温の低下率との間には,有意な正の相関が成立した.一方,全身加温時においては,皮膚交感神経活動中の血管収縮神経活動成分の抑制と皮膚血流量の増加,および核温(鼓膜温)の低下が観察された.本成分の抑制率と鼓膜温低下および低下率との間には有意な正の相関を示した.[結論]局所・全身加温により抑制された皮膚交感神経活動中の血管収縮神経活動の抑制能が,核心温としての鼓膜温の調節に大きな役割を果たすことが明らかとなった.
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