研究概要 |
体温調節は非温熱的因子によって影響を受け、ホルモンはその代表的なものである。中でも性ホルモンは、月経周期に伴う体温の変動や更年期ののぼせ・冷えなどの現象から体温調節に影響することが良く知られている。しかしその詳しい作用機序はほとんど明らかになっていない。申請者は最近更年期ののぼせの発症機序を解析する過程で,視床下部で産生されるGonadolropin hormone releasing hormonc(GnRH)が、体温調節性の皮膚血管運動に関係しており、またその作用部位がGnRH受容体の密に存在する中隔野であることを明らかにした(Hosono et al.Brain Research,1997)。本研究の目的はこのGnRHの体温調節系に対する作用を神経生理学的に厳密に解析することである。体温調節の神経生理学的研究はここ10年ほど停滞していた。その理由の一つは、各効果器反応に関係したニューロンが電気生理学的あるいは組織学的に厳密に同定出来ないために、ニューロンの活動と全身の調節反応を結びつけることが出来ない点にあった。申請者らは,体温調節性の皮膚血管運動に関わる視束前野ニューロンは腹側被蓋野と中脳中心灰自質に投射することを明らかにした(Zhang YH,Hosono T et al,J.Physiology 1997)。 以上の研究成果の進展を踏まえて、本年度は中隔野・視床下部を中心とする神経回路の検討に必要な電気生理学的計測系を確立した。特に、中隔野・視床下部間の情報連絡をより詳細に検討するために、脳スライス灌流実験系を確立した。
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