研究概要 |
本研究では、GnRHの脳内作用に関連した体温調節性神経回路を明らかにするために放熱反応の一つである皮膚血管運動に着目し、視床下部視索前野の局所加温による温度情報が遠心性信号として投射される部位を刺激・切断実験により検討した。ついでその投射部位へ線維連絡を持つ視床下部視索前野ニューロンの性質・中隔野と視床下部視索前野の体温調節性皮膚血管運動中枢との関係を電気生理学的な実験によって解析した。 1.刺激・切断実験:麻酔下のラットで、中脳中心灰白質およびその腹外側の網様体を電気刺激または化学刺激すると皮膚血管の拡張が起こった.一方、電気刺激で皮膚血管収縮の起こる部位は中脳腹側被蓋野に限局していた。化学刺激による血管収縮は腹側被蓋野に限局していた.中脳中心灰白質および腹外側網様体領域をハラス型ナイフで切断すると、視床下部局所加温による血管拡張の消失がみられた.腹側被蓋野尾側の切断では皮膚血管の拡張が起こった。 2.電気生理実験:腹側被蓋野の電気刺激に逆行性応答する視索前野ニューロンの活動を細胞外記録した.局所温上昇で活動の増す温感受性ニューロンは伝導速度が遅い傾向が見られた.中隔野の電気刺激に順行性に応答する温感受性ニューロンは中隔野電気刺激によって、44%は促進、13%は抑制、18%は促進後抑制、25%は抑制後促進であった。 今回の実験の結果から皮膚血管運動に関係した視索前野からの遠心路に中脳で腹側被蓋野への抑制性回路と,中心灰白質/網様体へ興奮性回路があることが示された.それらの皮膚血管運動に関連した視索前野ニューロンの多数は中隔野電気刺激に促進性応答を示した。今後の課題としては、スライス実験などによって中隔野-視床下部系に視点を絞った同回路へのGnRHの作用の検討が挙げられる。
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