高齢者における細胞性免疫能低下と運動トレーニング効果に関する研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10670065
• 研究機関: 山口県立大学
• 研究代表者: 森口 覚 山口県立大学, 生活科学部, 教授 (80166397)
• 研究分担者: 清水 英治 徳島大学, 医学部, 講師 (50187449)
• キーワード: 高齢者 / 血清アルブミン値 / 体格指数(BMI) / 日常生活機能(ADL) / 末梢血リンパ球 / 免疫能 / 幼若化能 / NK活性

研究概要

平成10年度は県内の老人保健施設に入所する男女約104名(男23名、女81名)を対象に内科検診、血圧血液検査、尿検査等の健康状況調査を実施した。本研究では経口摂取可能で免疫系疾患を持たない女性62名(平均年齢84.2±6.3歳)を対象者とした。調査項目としては、体格指数(BMI)、日常生活機能(ADL)、血清アルブミン値等を測定した。BMIによる肥満判定は日本肥満学会の基準を用いた。また、ADLは当老人保健施設の判定法を用い、項目別に点数化し、その合計点数により判定を行った。さらに、免疫能としでは早朝空腹時にヘパリン添加末梢血を採取し、それをヒトリンパ球分離培地上に重層、遠心することにより末梢血リンパ球を分離した。リンパ球機能としてK562細胞を標的細胞とするNK活性とPHAあるいはConAに対する幼若化能を測定した。免疫能については、健康な女子大学生(平均年齢21.0±1.1)を対照として比較検討を行った。その結果、BMIによる肥満判定では痩せ(18<BMI<20)及び著しい痩せ(BMI<18)が全体の45.2%を占めたが、肥満(BMI>26.4)及び肥満傾向(24<BMI<26.4)の者も14.5%存在した。また、血清アルブミン値によって栄養状態をみたところ、中等度(2.1〜3.0)及び軽度(3.0〜3.5)栄養不良と判定された者が27.5%あった。この値は看護記録からの食事摂取調査の結果と一致していた。また、肥満者において末梢血リンパ球のPHA及びConAに対する幼若化能の著しい低下を認め、高齢者における肥満が健康阻害因子の一つであることが示唆された。さらに、ADLの低い者ではNK活性が著明に低下していることが見出され、老人保健施設入所者における寝たきり状態がウイルス、細菌感染並びに癌発生を抑制するうえで重要な働きをしているNK細胞機能を低下させることが明らかとなり、高齢者の健康を保持・増進するうえでも寝たきりの改善、つまりADLの改善が重要であることが本研究結果から示唆された.

研究成果

• [文献書誌] Moriguchi,S.: "Exercise training restores decreased cellular immune functions in obese Zucker rats" J.Appl.Physiol.84(1). 311-317 (1998)
• [文献書誌] Moriguchi,S.: "Decreased mitogen response of splenic lymphocytes in obese Zucker rats is associated with the decreased expression........" Am.J.Clin.Nutr.67(6). 1124-1129 (1998)
• [文献書誌] Fukuju,Y.: "Effects of food restriction and exercise training on mitogen response of splenic lymphocytes in OLETF rats......." Nutr.Res.18(11). 1899-1906 (1998)
• [文献書誌] Muraga,M.: "Decreased mitogen response of splenocytes in senescence accel-erated mice (SAM-P1) is not restored by high vitamin E diet" Nutr.Res.19. (1999)
• [文献書誌] 森口 覚: "運動と免疫能" HEALTH DIGEST. 14(2). (1999)
• [文献書誌] 森口 覚: "栄養と免疫能、健康の科学" 金芳堂、京都, 250 (1999)
• [文献書誌] 森口 覚: "運動と免疫能、健康の科学" 金芳堂、京都, 250 (1999)