住民の約50%が65歳以上の高齢者である山口県大島郡東和町において、健康調査を実施した。調査としては血液生化学検査による栄養状態の評価、末梢血リンパ球機能を中心とする細胞性免疫能の評価、握力や体前屈、歩行時間等による運動能力の評価並びにアンケートによる食習慣チェックを行い、それに基づき被調査者の栄養状態、免疫状態を評価した。さらに、各々のパラメーターを比較検討することにより、高齢者の免疫能保持に関わる生活因子(栄養並びに運動等)の探求を試みた。その結果、血液生化学検査値から全般的に東和町在住の高齢者の栄養状態は比較的良く、健康状態も良好であると評価された。しかし、免疫学的にみた場合、65歳以上の高齢者においても、年齢と末梢血リンパ球増殖能との間に有意な負の相関を認め、年齢の高いヒトほど宿主細胞性免疫能の低いことがわかった。これまで、ビタミンE(VE)が高齢者の低下した免疫能を改善することが見出されている。今回の調査では血漿VE濃度と血中のトリグリセリド(TG)、総コレステロール(T-cho)並びにLDL-コレステロール濃度との間に有意な相関を認めた。このことは、VE栄養状態をみる場合には血中脂質の変化を併せて考える必要があることを示唆している。そこで、各脂質当たりのVE濃度と末梢血リンパ球機能とを比較したところ、TG当たりのVE濃度と末梢血リンパ球との間に有意な正相関(p<0.05)を見出した。このことは、65歳以上の高齢者において、VE栄養状態の良い者ほど細胞性免疫能の高いことを示唆している。その他、握力、体前屈、歩行速度、開眼片足立ちなどと免疫能との関連を比較検討したが、際だった関連はみられなかった。以上、健康な高齢者の免疫能を保持する上でVE栄養状態の重要性が疫学的に初めて明らかにされた。
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