本研究は平成10年度から11年度にかけて、以下に示す研究組織と経費によって実施されたものである。その内容は平成10年度においては老人保健施設入所者を対象とした疫学調査に基づいた研究とモデル動物を用いた実験的研究を実施した。 その結果、肥満が高齢者の健康状態を損なう危険因子の一つであることを見出すとともに、毎日の衣服の着脱衣やふとんの上げ下ろしなどの日常生活機能(ADL)の保持が高齢者の細胞性免疫を維持するうえでも重要であることを明らかにした。さらに、平成11年度においては、山口県内だけでなく、全国的にも高齢化率の高いことで有名な大島郡東和町在住の65歳〜90歳までの高齢者、約500名(町在住の高齢者人口の約1/5に相当)について健康調査(栄養、運動ならびに血液生化学、免疫学的検査)を実施した。その結果、栄養状態は比較的良好であったが、高齢者では細胞性免疫能の低下を認めた。さらに、それが血中一酸化窒素(NO)濃度の変化と関連し、ビタミンE栄養状態の良い者では改善されることを見出した。 以上、2年間にわたる高齢者を対象とする研究により、高齢者の健康状態を保持するうえで、ADLの維持とビタミンEなどの栄養素摂取の重要性を明らかにした。
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