研究概要 |
生物リズムの発現機構を解析する目的で、ラットの視交叉上核(哺乳動物の生物時計の中枢)でのArg-vasopressin(AVP)ペプタイドとこれをコードするmessengerRNA(AVPmRNA)の挙動を検討した。 AVPは視交叉上核(SCN)中で、時刻を知る手がかりのない条件下で自由継続リズムを示すことを私共も今まで報告してきた。 mRNAの量的解析には多数個体からののSCNのmRNAを必要とし、一個体から得られたmRNAの量で比較することが切望されてきた、そこでmRNAからリバーストランスクリプターゼを用いcDNAを作成しこれを鋳型としてPCRを行ない増幅産物の量の多少は始めにSCN中に存在していたAVPmRNA量を反映したものと考えた。別に同一のcDNAから別種のプライマーを用いてPCRを行なって得られたβactinのmRNA由来のPCR産物の量をコントロールとして定量した。AVPmRNAの発現は光反応やメラトニンに対して10分以内に増加する傾向で、AVPペプタイド合成のためだけにAVPmRNAが存在するとは考えにくいことが推測された。以上とは別に他の時計関連遺伝子(per1,per2,per3,CLOCK,BMALl,TIM)との相互作用を調べる一助として、AVPmRNAの5'末端領域の解析を試みた。視床下部の室傍核や腹内側核にあるAVPは浸透圧で増加するがSCNのAVPは浸透圧に応答しないしcAMPで増えない。 室傍核や腹内側核でのAVPgeneの転写領域にはcAMPレスポンシブルエレメントが配座するが、SCN由来のAVPgeneはこれを欠損している可能性を調べた。5'-RACE法でSCNmRNAの非転写領域を腹内側核由来のものと比較している。 PCR産物をクローニングしたところ、SCNと腹内側核由来の領域は約200base異なることが推察でき、今、塩基配列を解明している段階。
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