(1) 松果体メラトニン分泌に及ぼす各種ストレスの影響:各種ストレスによるナロキソン誘起LH分泌抑制作用と血中メラトニン濃度の変化との間の相関を検討し、緊縛拘束以外のストレスでは有意の相関は確認されなかった。従って、ストレスによるメラトニン放出によるナロキソン誘起LH分泌のを抑制には、視床下部LHRH放出機構に何らかのメラトニン感受性亢進機構が働くものと推測された。 (2) 各種ストレスによるナロキソン誘起LH分泌抑制における松果体の関与:上記実験(1)と同様に、緊縛拘束以外のストレスによるナロキソン誘起LH分泌の抑制に対する松果体摘出の効果は明瞭に確認されなかった。 (3) 感染性ストレスによるLH分泌抑制作用部位の検討:前年度に続き、LPS投与によるLH分泌抑制作用部位を検討し、予備的結果とは一部異なりLPSはナロキソン及びNMDA誘起LH分泌を抑制し、LHRH誘起LH分泌を抑制しないことを見出した。この結果は、急性緊縛拘束ストレスによる抑制と同様であり、両ストレスのゴナドトロピン分泌抑制作用部位がともに視床下部内にあって、オピオイド作動性及び興奮性アミノ酸作動性神経より下位に共通の作用部位を持つことを示唆する。さらに、LPS処置により第3脳室底の上衣細胞(tanycyte)に強いc-fos発現を見出し、感染性ストレスにおけるtanycyteの関与を示唆した。 (4) その他の脳内因子の検討:ナロキソン、NMDA及びLHRH誘起LH分泌に対するインターロイキン(IL)-1βの影響を検討し、脳室内への十分量のIL-1β投与がこれらにより誘起されるLH分泌をいずれも抑制しないことを見出した。この結果は、メラトニン、緊縛ストレス、感染性ストレスのいずれの効果とも異なっており、これらによるLH分泌抑制にIL-1βを介さない機構が少なくとも一部関与することが示唆された。
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