ソマトスタチン受容体には5種類のサブタイプ(sst1-sst5)遺伝子が存在する。正常雄ラット下垂体では、主に5型と2型が発現していること、エストロゲンの慢性投与で2型が誘導され、5型は顕著に減少することを私達は報告してきた。本研究は、2型と5型遺伝子の5'隣接上流域のプロモーター解析と、ホルモン受容体など転写調節因子による転写調節機構の解析から、両サブタイプの下垂体における機能や発現調節の生理的意義を明確にすることを目的としている。本年度は次に示す結果を得た。(1)ゲルシフト法により、2型、5型プロモーター領域のトランスに働く転写因子群とそれらの認識部位を明らかにした。更に、部位特異的変異法を用いて、プロモーター活性に必要とされるシスのエレメントを明確にした。GH_3細胞では2型遺伝子のSp1サイトにはSp2、Sp3が結合し、cAMP応答エレメントにはATF-2/c-Junが結合することがわかった。5型遺伝子では遠位のSp1サイトにSp2、Sp3が転写調節因子として作用していることがわかった。(2)2型、5型、両遺伝子の5'上流域には典型的なエストロゲン応答配列は認められなかったが、エストロゲンは5型遺伝子の転写に負の調節を示した。下垂体特異的転写調節因子Pit-1の共発現はエストロゲン作用に抑制的に働き、Pit-1レベルが発現に強く影響することを明らかにした。2型遺伝子は、Pit-1の有無にかかわらず、エストロゲンは正の調節を示した。下垂体の発生分化に関わる転写因子Ptx1は、2型と5型の両遺伝子5'上流領域に作用し、転写活性を正に調節することがわかった。以上、本研究から、ソマトスタチン受容体2型、5型遺伝子の転写に機能するシス配列とトランスに働く転写因子を明らかにし、下垂体特異的転写因子による転写活性の修飾を示唆した。また、エストロゲンは両型の遺伝子転写を修飾するが、その作用機序は両型で異っていることが推測された。
|