本年度は以下の実験を行なった。95極の双極電極を麻酔犬の右左両心房に縫着してPACAP-27投与と頸部迷走神経刺激の効果を右心房の高位および低位の4カ所における電気生理学的指標の変化で比較検討した。PACAP-27は頚部迷走神経刺激に比較して頻回に心房細動を誘発した。PACAP-27は左右心房の高位および低位の4カ所すべてで同様に有効不応期と波長を短縮したが、迷走神経刺激は高位右心房のみで有効不応期を短縮したが他の3カ所ではしなかった。迷走神経刺激による実験から不応期の短縮が部位により異なり、不応期の不均一性の増加すると心房細動が誘発されると考えられてきたが、本研究では、PACAPによる心房細動の誘発には不応期の不均一性の増加が必ずしも必要でないと考えられた。有効不応期の短縮と早期期外収縮の伝導性がPACAP-27の大きな心房細動誘発能に関与していると考えられた。また、有効不応期の短縮がムスカリン拮抗薬のアトロピンによって抑制されることから、頚部迷走神経によって活性化されない心臓内の副交感神経をPACAP-27が刺激して心房細動を誘発するものと考えられた。このように迷走神経刺激の実験で得られた心房細動の誘発機序と異なる可能性を示した。 また、右心房心筋の受容体分布の不均一性とペースメーカー領域の関連を検討するため[^<125>I]CYPおよび[^3H]QNBを用いて高位(前面)および低位右心房、洞房結節領域および右心耳の4カ所で受容体密度と解離定数を測定した。その結果、βアドレナリン受容体は密度と解離定数に部位による違いはないが、ムスカリン受容体は洞房結節領域のみで有意に密度が高く、解離定数に違いがなかった。
|