モルモット消化管平滑筋からショ糖密度勾配法によって微細形質膜を作成し、ムスカリン受容体/G蛋白質/受容体作動性陽イオンチャネル蛋白に対する、各種調節物質の効果を検討した。得られた微細膜が形質膜由来であることは、この筋肉に大量に存在するL-型電位依存性Caチャネルの選択的リガンド、ジヒドロピリジン誘導体(PN200-110)の結合や、高コンダクタンスCa依存性Kチャネルの活性によって確認した。微細膜を人工脂質膜に再構成後、細胞内外側のNaイオン濃度を250mMとし、細胞内側の遊離Ca濃度を約125nMとした条件下では、チャネル活性が検出できなかった。次に細胞外側に100μMアセチルコリンを加え、細胞内側にGTPあるいはGTPγS100μMを添加すると、msオーダーのバースト状の開閉(+40mVにおける平均開口時間:1.5および4.3ms;平均閉鎖時間:0.56ms)をくり返し、50〜70pSのコンダクタンスを示すチャネル電流が記録された。このチャネル電流の逆転電位は0mV附近にあり、その活性は脱分極によって著明に増加したが、細胞内側の遊離Ca濃度を10nM以下まで減少させると消失した。これらの性質は、生組織で観察される受容体作動性陽イオンチャネルのそれとほぼ一致しており、この実験系においても、受容体-G蛋白質-チャネル蛋白の分子会合体が保存されているいることを示している。更に、この陽イオンチャネルの活性化にセカンドメッセンジャーを必要としないことも強く示唆している。しかし現時点では、安定して長時間チャネル活性を記録することが困難で、目的とするチャネルの制御機構の詳細まで検討するにいたっていない。この点については、共同研究者であるUCLAのDr.Toroのグループと改善策を再検討中であり、同時に細胞内エネルギー代謝(特に解糖系を介した)やチロシンキナーゼによるリン酸化を介したチャネル活性制御についても明らかにして、近日中に論文として発表する予定である。
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