研究概要 |
平滑筋から作成した微細形質膜を人工脂質二重膜に再構成し、G蛋白質共役型受容体刺激によって活性化されるCa^<2+>透過型陽イオンチャネル(ROCCs)活性を長時間記録する方法を確立した。この目的を遂行するために、蔗糖密度勾配超遠心分離法による微細形質膜の精製とその人工膜への再構成法(Tor oe tal,1990)を改良し、材料としてはROCCを高密度に発現しているモルモット回腸縦走筋を用いた。上記の方法を用いて、蔗糖密度勾配(25/30%の界面)から、高い蛋白含量を示す微細形質膜の画分が得られた。このようにして得られた画分を、先端を細くしたガラス棒を用いて人工脂質膜(組成; PE:PS:PC=12.5: 50 :7.5)に直接導入すると、形質膜に豊富に存在するCa^<2+>依存性K^+チャネルが高い頻度(約70%)で検出された。この時、再構成されたK^+チャネルの電位依存性から判断すると、殆どの微細形質膜胞はinside-outであることが分かった。更に、再構成された微細形質膜の内外をNa^+イオンに置換し、細胞質側にGTP_γS(100μM)を加えると、約百nM以上のCa^<2+>を必要とし、膜脱分極によって活性が増加する性質を示すイオンチャネル活性が比較的高い頻度で検出され(約20%)。10分以上にわたってその活性を安定して記録する事が出来た。このチャネルは細胞質側にGDPβS(1mM)を予め添加しておくと活性化が阻害され、細胞外Na^+濃度を減少させると、その逆転電位が左方移動し単一チャネルコンダクタンスが減少した。以上の性質は、同じ組織から記録されるムスカリン受容体作動性陽イオン電流の性質とほぼ完全に一致した。これらの結果から、これから更に方法の改良を続ける必要があるものの、本研究で確立された方法が、平滑筋のROCCsの性質を単一チャネルレベルて検討するのに、極めて有用である事が明らかになった。
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