本研究では細胞内Ca^<2+>放出チャネルであるIP_3受容体(IP_3R)及びリアノジン受容体(RYR)のサブユニット間に見られるヘテロな相互作用様式について解析した。 1.可溶化したラット小脳膜分画に対して抗RYR抗体あるいは抗IP_3Rl抗体を用いた免疫沈降実験を行うと、IP_3R1サブユニットとRYR2サブユニットの共免疫沈降が見られた。免疫前血清あるいは抗原ペプチドで抗原認識部位をブロックした抗体を用いたコントロール実験からIP_3R1とRYR2サブユニットの共免疫沈降は抗体の特異的反応により起こることが確認された。さらに膜分画中のタンパク質をあらかじめ熱変性させ、会合しているサブユニットを解離させるとIP_3R1とRYR2サブユニットの共免疫沈降は見られなくなった。これらの結果はラット小脳膜分画に含まれるIP_3R1サブユニットとRYR2サブユニットの間に物理的相互作用が存在することを示しており、両者が会合していることが示唆された。 ラット大脳膜分画を用いた同様の実験から、小脳だけではなく大脳においてもIP_3R1とRYR2サブユニットが免疫共沈してくることがわかった。 2.複数種類のCa^<2+>放出チャネルサブユニットからなるヘテロオリゴマーが果たして四量体構造を持つか否かを解析した。ラット肝膜蛋白質を化学的に架橋し、会合しているポリペプチド鎖(サブユニット)が解離しないようにしたサンプルに対して抗IP_3R1抗体を用いた免疫沈降実験を行った。免疫沈降産物に対してagarose-PAGE法と抗IP_3R2抗体を用いたWestern blotを組み合わせて解析を行った結果IP_33R1及びIP_3R2サブユニットからなるヘテロオリゴマーが四量体であることが明かとなった。この結果から異なるサブタイプのサブユニットからなるIP_3Rヘテロ体も四量体構造を持つ機能的チャネルであることが示唆された。
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