研究課題/領域番号 |
10670090
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
徳冨 直史 熊本大学, 医学部, 助教授 (30227582)
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研究分担者 |
徳冨 芳子 熊本大学, 医学部, 助手 (90253723)
西 勝英 熊本大学, 医学部, 教授 (00040220)
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キーワード | 抗c-KITモノクローナル抗体 / 神経突起の伸展 / シナプスの形成 / パッチクランプ法 / 海馬ニューロン / 大脳皮質ニューロン / AMPA / kainate型シナプス / 脊髄後根神経節細胞 |
研究概要 |
成熟脳の形成過程に関わる多様な因子の一つとしてc-kitプロトオンコジーン由来チロシンキナーゼレセプター(c-KIT)もその有力な候補の一つに位置付けられている。本研究では、抗c-KITモノクローナル抗体(ACK2)を用いて、シナプス活動と細胞内Ca^<2+>シグナル系への影響について電気生理学的ならびに形態学的に検討した。モノクローナル抗体(ACK2)を慢性投与したBALB/cマウスの脳各部位より新鮮単離したニューロンと培養環境下でシナプスを形成させたニューロンのシナプス電流と受容体応答および電気的興奮性についてパッチクランプ法を用いて検討した結果、fast EPSP(興奮性シナプス後電位)を媒介するAMPA/kainate型受容体アゴニストのカイニン酸(KA)に対する反応は逆転電位やイオンチャンネルの電圧依存性に対照群とACK2処置群で全く差がみとめられなかったが、培養環境下のシナプス形成がACK2によってわるくなること、すなわち培養した海馬および大脳皮質ニューロンはACK2処置群では神経突起の伸展が著しく阻害されているのが観察された。一方ミクログリアを含むその他のグリア細胞の成育についてはほとんど目だった影響が認められなかった。また細胞内Ca^<2+>シグナル系については非神経細胞(平滑筋)同様、両群で差が認められなかった。 以上のようにACK2は培養ニューロンの神経突起の伸展とシナプスの形成を阻害することが形態学的に観察されたが、このような培養条件下に形成されたAMPA/kainate型シナプスの活動は自発性の興奮性シナプス後電流(EPSC)として観察され、ACK2処置群では著しくEPSCの活性が低いかまたは全く観察されなかった。さらに、末梢神経標本として、BALB/cマウスの脊髄後根神経節細胞(DRGニューロン)を培養して神経突起の伸展に対するACK2の影響を検討したところ、GABA_A受容体応答を含めて、対照群と有意な差は認められなかった。このことはDRGニューロンの大半(70%以上)はc-KIT感受性ではなく、NGF感受性であるという過去の知見と符合する。
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