NOによる心筋保護作用の機序として、虚血時のアデノシン産生に重要な役割を担っているecto-5'-uncleotidase(ecto-5'-NT)活性にNOが関与していることを明らかにした。現在、虚血により上昇したノルエピネフリンはα_1-adrenoceptorとprotein kinase Cの刺激により、心筋ecto-5'-NT活性が上昇し、アデノシンの産生が増加することは定説となっている。そこで、in vivo マイクロダイアリシス法により、基質であるAMPを一定量供することにより、ecto-5'-NTの活性を直接in vivoで評価した。この手法に従ってTyramineにより放出されたノルエピネフリンはアデノシンの産生を増加すること認め、Reserpineにより、ノルエピネフリンを枯渇させることにより、アデノシンの産生増加が抑制されることを証明した。さらに、活性酸素の一種であるSinglet oxygenによってもアデノシンの産生増加が抑制されることを認めた。しかし、NO が細胞内に cyclic guanosine monophosphate(cGMP)を増加させることにより、cGMP-dependent protein kinase C(PKG)の活性化を介してアデノシン産生を促進すると、心筋ではecto-5'-NT活性がPKGによっても促進的にコントロールされている可能性がある。その機序について種々のNO発生剤である(SNAP、ニコランジル及びFK-409)を与えるとNOによるecto-5'-NT活性が上昇することが分かった。この増加はecto-5'-NTの阻害剤であるAOPCPにより阻止された。さらにNO消去剤であるCarboxy-PTIO存在下でNOを消去させたところ 、アデノシン産生増加は阻止された。そこで膜透過性である8-ブロム-cGMPを潅流させ、細胞内cGMPを上昇させたところ、アデノシン産生が増加した。NO発生剤と8-ブロム-cGMPがAMP潅流下のアデノシン濃度を増加したことより、NOはcGMPを介して心筋ecto-5'-NTを活性化させアデノシン産生を増加させる新たな経路が存在することが分かった。
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