研究概要 |
ATP受容体の生体内分布をRT-PCR法を用いて検討した。 1. まず11種類のATP受容体サブタイプ(P2X1〜P2X7、P2Y1,P2Y2,P2Y4,P2Y6)に特異的なPCRプライマーを作製し、ラット脳cDNAを鋳型としてPCR反応の特異性を検討した。すべてのプライマーにより予想されたcDNA断片が得られ、制限酵素サイトの存在または直接シークエンスを行い、PCR産物が各P2プリン受容体由来であることを確認した。次に、PCR反応の定量性について検討した。1μgのtotal RNAから逆転写反応で得たcDNAの1/60量を鋳型とした場合、組織で発現している機能的な受容体遺伝子を定量的に解析するには28回の増幅が最も適当であった。この条件下ではPCR産物がmRNA量に依存していることを確認した。 2. ラット脳各部位よりRNAを抽出し、上記の条件でATP受容体の分布を検討した。イオンチャネル型ではP2X4とP2X6の発現量が多く分布していた。またP2X7も発現量は少ないものの広範囲な分布が見られた。これに対し、P2X1およびP2X3は少なく、P2X2は視床下部、上丘、扁桃体などに局在し、P2X5は中脳に分布が見られた。一方、G蛋白共役型ではP2Y1、P2Y2が広く分布し、特に線条体ではP2Y1が多かった。P2Y4、P2Y6は全体に少なく中脳、松果体などに局在が見られた。 3. 脳の主要部位(大脳、小脳、,海馬、線条体、視床、視床下部)について生後の発達におけるP2プリン受容体遺伝子発現変化を検討した。各P2プリン受容体のうちP2X2受容体は出生直後最も発現量が多く成長とともに減少した。逆にP2Y2、P2Y6は発現量が増加した。 来年度は、PCRで得られたcDNA断片からアンチセンスRNAプローブを作成し、in situハイブリダイゼーションを行い、より詳細な組織分布を調べるとともに、末梢組織においても同様な解折を行いたい。
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