研究概要 |
ATP受容体サブタイプの生体内分布について、今年度は末梢組織についてRT-PCR法で検討し、子宮と膀胱についてはATPの作用に関与する受容体サブタイプの解析を行った。 1.末梢組織における分布 ATP受容体サブタイプは広範囲に分布する受容体(P2X4,P2Y1-2,P2Y4)、偏りがあるもの(P2X1-2,P2X5-7,P2Y4-6)および発現が少ないもの(P2X3)に分類できた。このうちP2X1は動脈に最も多く、下腹神経系に支配される平滑筋組織と骨髄に発現が見られた。また、P2X5は心臓で最も多く、心機能調節への関与が示唆された。他ではP2X2は舌、嗅覚上皮など感覚器官、P2X6は骨格筋、P2X7は消化器系、P2Y6は呼吸器系に多かった。 2.ATP誘発組織応答に関与するATP受容体サブタイプ 子宮筋にはP2X1、P2X4、P2X6-7、P2Y1の発現が認められ、妊娠中にP2X1、P2X4の発現が著明に減少し、分娩時にはこの減少が回復するとともに、P2Y1の増加も認められた。これと対応して、妊娠中期の子宮ではP2X受容体共通のアゴニストである2-methylthio ATP、P2X1のアゴニストであるαβ-methylene ATPの収縮作用が減弱し、末期には増大したことから、妊娠維持、分娩にATP受容体発現変化の関与が示唆された。また、ATPは膀胱を二相性に収縮させ、初期の応答はP2X1およびP2X4が、二相目はP2Y1-2により産生するプロスタグランジンに媒介されることが示唆された。 この他に、培養細胞を用いて既知のATP受容体サブタイプに分類できない性質を示す反応に細胞膜局所で産生されるアデノシンが関与すること、炎症刺激においてサイトカイン遺伝子の発現とともにP2Y2やP2X7受容体の発現が変化するすることを見い出した。
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