研究概要 |
心筋の収縮系、筋小胞体及びその他のATP消費系に関する性質を明らかにする為、ラット、モルモット、イヌの心室筋より生筋条片標本及びスキンドファイバーを作製し、収縮特性、筋小胞体のCa^<2+>取込み,遊離能、ATPase活性等を調べ,以下の結果を得た. 1 生筋条片標本を用い、電気刺激による収縮特性、カフェイン反応を観察した。カフェインによる拘縮はラットで大きくモルモットではほとんど見られなかった。 2 スキンドファイバーを用い37度で収縮測定を行った。MgATP存在下で、ラット及びイヌ心室筋では著明なカフェイン拘縮が見られたが、モルモット心筋では非常に小さなカフェイン拘縮しか認められなかった。またラット心筋はRigor拘縮を起こしやすくATPの消費が速いことが示唆された。 3 スキンドファイバーを用い、Ca^<2+>指示薬fura2存在下でCa^<2+>遊離を測定した。カフェインによるCa^<2+>遊離はラット、モルモット、イヌ、全ての心筋ではっきりと認められた。モルモット心筋にカフェイン拘縮が見られなかったのは、筋小胞体の他に収縮系のCa^<2+>感受性が異なっている為と考えられる。また筋小胞体のCa^<2+>取込み量が増すとCa^<2+>の漏れの速度が著しく増大した。 4 スキンドファイバーのATPase活性をNADHの蛍光を利用した酵素カップリング法により測定した。Ca^<2+>非存在下のbasalな活性及び収縮系のATPase活性はラットが最も高かった。一方、CPA感受性の筋小胞体活性はラット、モルモットではあまり差が無かった。以上より、ATP消費系の組成は動物種差が大きく、心不全治療薬のエネルギー消費に対する効果を検討するためにはヒトに性質の近い実験動物を選ぶ必要があることがわかった。また筋小胞体のCa^<2+>取込みレベルもATP消費に大きな影響を与える事がわかった。
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