研究概要 |
本年度はATP放出機構に関与する筋小胞体とミトコンドリアを結ぶシグナル連関および放出ATPの起源を明らかにするための基礎研究を行い以下に示すような研究成果が得られた。 P2-受容体アゴニストであるα,β-methylene ATP(α.β-mATP)によるモルモット回腸縦走筋からのATP放出は、phospholipase C阻害剤のneomycinやinositol monophosphatase阻害剤のLiClにより、また細胞内Ca^<2+>のキレート剤であるBAPTA、Ca/calmodulin阻害剤のW-7および小胞体膜のCa^<2+>-pump阻害剤のthapsigarginによって、さらにミトコンドリア阻害剤のrotenone、oligomycin、非共役剤のCCCPによってそれぞれ著しく抑制されたが、これらはbasalなATP放出には全く影響しなかった。モルモット回腸および膀胱筋においてRhod-2/AMを用いた実験で、α,β-mATPはミトコンドリア内の遊離Ca^<2+>量の増加を示した。これらの結果から、ATP受容体、多分P2Y-受容体(Br.J.Pharmacol.121,1744.1997)、刺激によるATPの放出機構はIP_3感受性をもつ小胞体からのCa^<2+>遊離を引起こし、このシグナルがミトコンドリアに達し、ミトコンドリア内のCa^<2+>が上昇し、恐らく、Ca^<2+>によりミトコンドリア内水酸化酵素が活性化されATP合成が促進され、何らかの膜輸送系を介してATPが細胞外に放出されるものと考えられる。 また、モルモット結腸紐および培養平滑筋細胞においてもangiotensinIIはAT_1受容体をsubstancePはNK-1およびNK-2受容体を介してATPの放出とinositol(1,4.5)trisphosphateの産生増加を引起こすこと、angiotensinIIによるATP放出はneomycinやthapsigargin、さらにrotenoneなどのミトコンドリアの阻害剤によって拮抗されることを明らかにしており、上記のATP放出に関与するシグナル伝達経路はIP_3産生を促進するアゴニストによるATP放出に共通したものであることが証明された。
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