研究概要 |
平成11年度は当初回腸平滑筋からのATP放出を引き込こす細胞内シグナリングについて検討し、ATP受容体アゴニストによる ATP放出にはIns(1,4,5)P_3産生増加が関与していることから小胞体とミトコンドリアを結ぶCa^<2+>シグナルについて画像解析を行う予定であった。しかし、モルモット精管培養平滑筋を用いた実験でこのα,β-methylene ATP(α,β-mATP)によるATP放出にはIP_3産生系は関与していない可能性が示されたので、検討の結果、以下のような興味ある研究成果が得られた。モルモット精管からのα,β-mATPによる著明なATP放出は回腸と異なりreactive blue2でなくsuraminによって拮抗されたので、P2X-受容体を介したと考えられる。回腸縦走筋からのα,β-mATPによるATP放出に効果的であったneomycinやlithiumのようなinositol代謝回転の阻害剤によっては精管からのそれは全く抑制されなかった。逆にryanodineおよびその受容体阻害剤のruthenium redの前処理により精管からのα,β-mATP によるATP放出は著明に拮抗されたのが、回腸からのそれは全く影響されなかった。しかしrotenoneやoligomycinなどのミトコンドリア阻害薬は両標本からのATP放出をいずれも抑制した。RT-PCR法による検討で、精管平滑筋からはryanodine type 1でなくtype2受容体のmRNAの発現が見られた。以上の結果、精管平滑筋からのATP受容体(P2X)刺激によるATP放出はryanodine受容体を介した細胞内Ca^<2+>遊離によって引き起こされる可能性が考えられ、今後のATP放出機構の研究に新たな展開が期待される。
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