研究概要 |
ATPはオートクリン/パラクリンとして細胞外に放出され、ほとんどすべての細胞膜に存在するATP(P2)受容体を介して広く細胞機能の調節に関与している可能性が考えられている。 しかし、ATPの細胞外への放出機構およびその細胞内の起源については現在不明のままである。本研究はATP放出に関与する筋小胞体とミトコンドリアを結ぶシグナル連関の有無を明らかにする目的のために行われた。 平成10年度の研究では、モルモット回腸縦走筋からのα,β-mATP(P2-アゴニスト)によるATP放出は、P2Y-受容体を介し、phospholipase C を活性化して、Ins(1,4,5)P_3産生増加による小胞体からのCa^<2+>遊離促進が関与している可能性が明らかにされた。 平成11年度の研究により、モルモット精管平滑筋からのα,β-mATPによるATP放出は、回腸の場合と異なり、P2X-受容体を介し何かのシグナルが小胞体上のリアノジン受容体を刺激し、同じくCa^<2+>遊離を促進することによって引き起こされる可能性が示された。しかし、いずれのATP放出もrotenoneなどのミトコンドリア阻害剤によって拮抗されたことから、このATP放出が小胞体とミトコンドリアを結ぶCa^<2+>シグナルとcoupleしている可能性が考えられる。この点については詳細な細胞内Ca^<2+> 変化の画像解析を行うために、収縮性をもたないラット肝培養細胞を用いて検討する予定で現在準備を進めている。
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