一般にエンドセリン(ET)受容体は脱感作が激しい。今回ET_A受容体を介するET-1の陰性変時作用に著しい種差を見出し、これを利用して脱感作の細胞内機序の解明を進めた。単離心筋細胞にwhole-cell patch clampを行い、細胞内環境の直接修飾を行った。同時に洞房結節細胞を用いてET_A受容体を介する陰性変時作用の電気生理学的機序の解明を進めた。 既知のET_A受容体は全て、第3細胞内ループにprotein kinase C(PK-C)によるリン酸化部位を持つ。モルモット心筋のET_A受容体アミノ酸構造のうち第2-第4細胞内ループのリン酸化可能な9個のアミノ酸残基は他の種と完全に一致したため、脱感作の種差の原因はリン酸化対象のアミノ酸の相違ではないことが判明した。 ラット心筋にstaurosporine(300nM)を前処置するとET_A受容体脱感作は完全に阻害された。単離ラット心房筋細胞内にEGTA10mMを灌流すると、I_<K(ACh)>電流の活性化を指標としたET_A受容体脱感作は一部阻害され、選択的PK-C inhibitorsやinhibitor peptideでも同様の結果を得たことからPK-Cによる受容体リン酸化が脱感作の必要条件であると判明した。幾つかのPK-Cアイソザイムの関与が判明した。一方、脱感作の欠如したモルモット心筋では、オカダ酸の存在下でisoproterenolと同時にPMA刺激を行うことで脱感作が惹起されたことより、脱感作にはPKC刺激の他にβアドレナリン受容体刺激で駆動される何らかの因子の関与が示唆された。GRK(G-protein coupled receptor kinace)の関与の可能性を検証した。GRKが分子内にRGS(regulator of G-protein signaling)ドメインを持つことに着目し、RGS蛋白質アイソザイムを用いてACh或いはET-1により誘発されるI_<K(ACh)>電流の活性化や減衰および回復の速度に対する効果を調べた。その結果、RGSはGi蛋白のリセットの加速によりmAChまたはET_A受容体の脱感作進行を抑制することが判明した。
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