受容体細胞内動態に基づく受容体理論の再検討

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10670105
• 研究機関: 国立小児病院
• 研究代表者: 辻本 豪三 国立小児病院, 小児医療研究センター・小児薬理研究部, 部長 (80172013)
• 研究分担者: 中山 靖久 , 重点研究支援協力員
• キーワード: α1アドレナリン受容体 / 可視化生物学手法 / GFP / クロルエチルクロニジン / フローサイトメトリー / レーザー共焦点顕微鏡

研究概要

我々は、α1アドレナリン受容体をG蛋白質共役型受容体のモデルとして用い、各サブタイプ受容体のペプチド抗体、蛍光標識リガンドや最近開発されたGreen Fluorescent Protein(GFP)を用い、受容体蛋白の標識等の分子生物学手法や蛋白蛍光標識法を確立した。更に、フローサイトメトリー及びレーザー共焦点顕微鏡の二つの蛍光検出方法にて、蛍光標識された受容体の細胞内局在変化を検出、定量を行った。この実験系を用い、受容体サブタイプの細胞内局在の違い、intermalizationのリアルタイムのモニター、更に、遺伝子改変技術と組み合わせて受容体の細胞膜表面への移送に必要な部位の決定、などを行った。具体的成果としては、(1)各α1アドレナリン受容体の細胞内局在がサブタイプにより異なること、更に、この細胞内局在の相違によりクロルエチルクロニジン(CEC)による不活化感受性の違いが生じることを見出した。α1アドレナリン受容体は各種薬物に対する親和性、並びにクロルエチルクロニジン(CEC)による不活化感受性の違いより薬理学的に二つのサブタイプに分類されている(α1A受容体とα1B受容体)。しかし、α1B受容体アルキル化剤CECの不活化による影響が各種処置法により大きく異なり、実験報告に統一を欠いている。我々は、CECが極めて親水性の高い特性から、細胞膜表面の受容体のみを不活化するとの仮説に基づき、α1aならびにαlb受容体遺伝子のN端にFLAG-tag、またはC端にGreen Fluorecent Protein(GFP)を組み込んだ受容体遺伝子を作製し、蛍光抗体ならびに蛍光リガンドを用いフローサイトメトリー解析、共焦点顕微鏡による画像解析、更に[125I]-HEATを用いた受容体結合実験を用い、各サブタイプ受容体蛋白の細胞内分布とCEC感受性の相関について検討した。これらのアッセイの結果、α1a受容体は細胞内に、αlb受容体は細胞膜表面に主として分布しており、更にintactcellのCEC処置はα1a受容体結合部位には余り影響が無かったが、α1b受容体を強く不活化した。以上のことより、CECはサブタイプに関わらず、細胞表面に存在するα1アドレナリン受容体蛋白を不活化し、各サブタイプ受容体蛋白の細胞内局在の相違がCEC感受性を決定していると考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Tsujimoto G,Hirasawa A,Sugawara T,Awaji T.: "Subtype-specific differences in subcellular localization and chlorethylclonidine in activation of α1-adrenoceptors." Life Sciences.62(17/18). 1567-1571 (1998)
• [文献書誌] Nasu K,Moriyama N,Fukazawa R,Tsujimoto G,Tanaka T,et al.: "Quantification and distribution of α1-adrenoceptor subtype mRNAs in male and female human posterior urethra." Br.J.Pharmacol.123. 1289-1293 (1998)
• [文献書誌] Shibata K,Hirasawa A,Foglar R,Ogawa S,Tsujimoto G: "Effects of Quinidine and Verapamil on human cardiovascular α1-adrenoceoptors." Circulation. 97. 1227-1230 (1998)
• [文献書誌] Take H,Shibata K,Hirasawa A,Takada T,Tsujimoto G,et al.: "Vasacular α1-adrenoceptor subtype selectivity and α1-blocker-induced orthostatic hypotension." Jpn.J.Pharmacol.77. 61-70 (1998)
• [文献書誌] Hirasawa A,Awaji T,Sugawara T,Tsujimoto A,Tsujimoto G: "Differential mechanism for the cell surface sorting and the agonist-promoted internalization of α1B-adrenoceptor." Br.J.Pharmacol.124. 55-62 (1998)
• [文献書誌] Takei Y,Tsujimoto G.: "Identification of a Novel MCM3-associated Protein that Facilitates MCM3 Nuclear Localization" J.Biol.Chem.273(35). 22177-22180 (1998)