研究概要 |
ヘモグロビン(Hb)の協同的酸素結合は、Relaxed(R)とTense(T)の2つの4次構造変化により説明されている。まずT-stateマーカーバンドとして知られるデオキシ型での287nmの負のCD帯が4次構造変化のみに由来するかどうか追及した。αとβ鎖よりなるHbは、サブユニットに分けてしまうと協同性を失う。サブユニットでも酸素結合解離にともない280nm付近のCDも多少変化し、これは3次構造変化によると考えた。四量体のHbとサブユニットにおけるCDの変化を比較することにより、デオキシHbが示す287nmの負のCD帯の半分は3次構造変化により、残りの半分が4次構造変化によることを初めて明らかにした(J.Inorg.Chem.82,93-101,2000)。また、このCD帯の位置からしてTyrやTrpの変化によることが考えられ、どの位置の芳香族アミノ酸がこの4次構造変化に寄与するかを異常Hbを用いて検討した。サブユニット接触面に位置するα140Tyr、β37Tyrの寄与を2つの異常Hb、Hb Rouen(α140Tyr->His)とHb Hirose(β37Trp->Ser)を用いて調べたところ、α140Tyrとβ37Trpの287nmの負のCD帯に対する寄与はそれぞれ30%、26%であった(Chirality,12,216-220,2000)。 α鎖でヘムに配位している近位HisがTyrに変異した異常HbはHb M Iwateとよばれ、異常鎖は酸化している。このTyrがどのような状態でヘム鉄に結合しているかを、紫外共鳴ラマン分光で調べ、Tyrosinateの状態であることをつきとめた(Biochemistry,43,13093-13105,2000)。
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