変異血色素における機能異常とタンパク質の高次構造変化との関連

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10670115
• 研究機関: 金沢大学
• 研究代表者: 長井 雅子 金沢大学, 医学部, 教授 (60019578)
• 研究分担者: 桜井 博 金沢大学, 医学部, 助教授 (00225848)
• キーワード: ヘモグロビン / 酸素平衡機能 / 紫外共鳴ラマン / 円二色性 / チロシン / トリプトファン / タンパクの構造変化

研究概要

UV共鳴ラマンでは、ヘモグロビン中のTyrとTrpのラマンバンドは別々の位置にあらわれるので、両アミノ酸の変化は同時かつ別個に調べることが出来る。ヘモグロビンに酸素が結合したときのこれら芳香族アミノ酸の変化を調べると、Tyrには強度変化と波数シフトが、Trpでは強度変化が主である。最近、我々は変異Hbを用いた研究により、Trpの変化はβ37Trpによる可能性が高いこと、またTyrの波数シフトはα42Tyrとα140Tyrによること、強度変化はβ145Tyrによることを明らかにした。β37Trp以外のTrpは他にα14とβ15にありそれによる可能性もある。これらの部位の異常ヘモグロビンは報告が少なく入手しずらいため、部位特異的変異導入法により、β15Trp→Leuとα14Trp→Leuの変異体を作成した。この変異体を用い現在UV共鳴ラマンスペクトルを測定し興味ある結果を得つつあるところである。これによりα14とβ15Trpの4次構造変化における役割を明らかにできそうである。また、チアノーゼを呈する異常血色素であるHbMの一つ、Hb M Boston(α58His→Tyr)について、EPR,吸収、可視・紫外共鳴ラマンおよび酸素平衡機能測定からpHの違いにより置換したTyrの動きが機能およびタンパクの4次構造に変化を与えることを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] S. Nagatomo, Y. Jin, N. Nagai, H. Hori, T. Kitagawa: "Changes in the abnormal subunit upon CO binding to normal subunit of Hb M Boston"Biophisical Chemistry. (in press). (2002)
• [文献書誌] N.Okishio, N.Tanaka, N.Nagai, T.Kitagawa: "Identification of tyrosine residues involved in ligand recognition by PI3K-SH3 domein"Biochemistry. 40(51). 15797-15804 (2001)
• [文献書誌] M.Nagai, M.Aki, R.Li, Y, Jin, S.Nagatomo, T.Kitagawa: "Heme structure of Hb M Iwate : A UV and visible resonance Raman study"Biochemistry. 39(43). 13039-13105 (2000)
• [文献書誌] N.Okisio, M.Nagai, R.Fukuda, S.Nagatomo, T.Kitagawa: "Interaction of PI3K Src homology 3 domein with its ligand peptide studied by absorption, CD and UV Raman"Biopolymers. 57. 208-217 (2000)
• [文献書誌] R.Li, Y.Nagai., M.Nagai: "Contribution of alfa14OTyr and beta37Trp to the near-UV CD spectra on structure change of Hb A"Chirality. 12. 216-220 (2000)
• [文献書誌] R.Li, Y.Nagai, M.Nagai: "Changes of tyrosine and tryptophan residues in human hemoglobin by oxygen binding"J. Inorg. Biochem.. 82. 93-101 (2000)
• [文献書誌] 北川禎三, 永井雅子: "基礎生化学実験法・第3巻蛋白質I検出・構造解析"東京化学同人. 281 (2000)