研究課題/領域番号 |
10670118
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
古川 圭子 名古屋大学, 医学部, 助手 (50260732)
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研究分担者 |
古川 鋼一 名古屋大学, 医学部, 教授 (80211530)
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キーワード | ガングリオシド / T細胞 / ノックアウト / インターロイキン2 / 複合型ガングリオシド / IL-2受容体 / シグナル伝達 |
研究概要 |
酸性スフィンゴ糖脂質、ガングリオシドが免疫系細胞において果たす役割について、特にT細胞の発生と機能を中心に検討した。ガングリオシドGM2/GD2合成酵素遺伝子およびGD3合成酵素遺伝子のノックアウトマウスを用いて、そのT細胞上の糖脂質発現の変化と機能異常につき検討した。 GM2/GD2合成酵素遺伝子ノックアウトマウスではGM/GD2/GA2以上の複合ガングリオシドの合成不全が予想されたが、その胸線細胞、脾細胞共に、GA1、GM1、GD1bの発現が完全に消失していた。T細胞数は〜70%に減少し、臓器重量が50〜80%に減少していた。胸線細胞ではCD3クロスリンクによる増殖反応が低下していた。脾細胞ではCD3クロスリンク、ConA激などによる増殖は正常であったが、インターロイキン2(IL-2)刺激による増殖が著しく低下していた。 脾細胞のIL-2による増殖能の低下のメカニズムを解析するためIL-2受容体発現とそれを介するシグナル伝達の検討を行ったところ、受容体α、β、γ鎖の発現レベルに差は見られず、ConA刺激時のα鎖の発現誘導も同等であった。IL-2のシグナル伝達に重要といわれるJAK-1、JAK-3の活性化に関して検討したところ、ノックアウトマウスで著しい遅延と低下を認めた。更に、c-fos、c-mycのmRNAのIL-2刺激時における発現レベルに関しては、特にc-fosの発現の遅延と低下が見られた。以上より、複合ガングリオシド欠失マウスではIL-2受容体γ鎖を介するシグナルの低下が、増殖反応の低下の原因となっていることが示唆された。これらの結果から、糖脂質によるT細胞増殖シグナルの制御メカニズムの一端が明らかになった。今後、ノックアウトマウスで消失したガングリオシド構造のどれがIL-2受容体のどのサブユニットと相互反応するかという点を中心に分子メカニズムを検討する予定である。
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