研究概要 |
酸性スフィンゴ糖脂質、ガングリオシドが免疫系細胞において果たす役割について、T細胞の機能を中心に検討した。ガングリオシドGM2/GD2合成酵素遺伝子のノックアウトマウスを用いて、そのT細胞上の糖脂質発現の変化と機能異常につき検討し、次の点を明らかにした。 GM2/GD2合成酵素遺伝子ノックアウトマウスの胸腺細胞、脾細胞では、GA1、GM1,GD1bの発現が消失していた。T細胞数は〜70%に減少し、臓器重量が50〜80%に減少していた。胸腺細胞ではCD3クロスリンクによる増殖反応が低下していた。脾細胞ではCD3クロスリンク、ConA刺激などによる増殖は正常であったが、インターロイキン2(IL-2)刺激による増殖が著しく低下していた。ラットに対する異種細胞反応性細胞傷害性T細胞活性の低下、NK活性の低下が認められた。脾細胞のIL-2による増殖能の低下のメカニズムを解析するためIL-2受容体発現とそれを介するシグナル伝達の検討を行ったところ、受容体α、β、γ鎖の発現レベルに差は見られず、ConA刺激時のα鎖の発現誘導も同等であった。IL-2のシグナル伝達に重要といわれるJAK-1、JAK-3、STAT5の活性化に関して検討したところ、ノックアウトマウスで著しい遅延と低下を認めた。更に、c-fos、c-mycのmRNAのIL-2刺激時における発現レベルに関しては、c-fosの発現の遅延と低下が見られた。以上より、複合ガングリオシド欠失マウスではIL-2受容体γ鎖を介するシグナルの低下が、増殖反応の低下の原因となっていることが示唆された。これらの結果から,糖脂質によるT細胞増殖シグナルの制御的役割が明らかになった。現在、IL-2受容体と会合し相互反応するガングリオシド構造の同定と相互反応による分子構造及び機能的変異の解析を中心に検討中である。
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