MyoDをはじめとするbHLH(basic helix-loop-helix)型転写因子は、種々の組織の発生・分化過程において重要な役割を果たしているが、Id2は、このbHLH型転写因子の機能を蛋白レベルで抑制する因子の一つであり、細胞分化を阻害する作用を持つ。これまでId2欠損マウスを作成してId2が生体で担う役割を研究してきたが、平成11年度におけるId2欠損マウスに関する研究実績は下記のとおりである。 1.NK細胞の分化障害はId2欠損マウスの脾臓や骨髄においてだけでなく、胎仔胸腺においても認められる。また、胎仔胸腺中のT細胞・NK細胞共通前駆細胞のNK細胞への分化能はId2欠損マウスにおいて欠落し、すべてがT細胞に分化していくことを明らかにした(投稿準備中)。 2.Id2欠損マウスは著明な高IgE血症を呈し、アレルギー性疾患の発症機序を明らかにする上で有用なモデルマウスになりうることが明らかになった(投稿準備中)。 3.Id2欠損マウスの乳汁分泌不全は妊娠前期の細胞増殖がほとんど認められないためであることを明らかにし、細胞増殖制御におけるId2の重要性を明らかにした(投稿中)。 4.卵巣cDNAライブラリーより新規のbHLH型転写因子を単離し、これがIdと同様の機序で他のbHLH型転写因子の機能を阻害し、細胞分化も抑制することを明らかにした。
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