Rho associated kinase(p160ROCK)は、低分子量GTP結合蛋白質RhoのGTP結合型(活性型)に選択的に結合し、活性化されるセリンスレオニンキナーゼである。本年度は、これまで作製、開発してきた本キナーゼのdominant active体、dominant negative体、および選択的阻害薬を用い、ROCKの新たな細胞内機能の同定およびROCKのリン酸化基質の同定を試みた。 1 ROCKの細胞内機能の同定 肝ガン細胞MMlは、LPA、またRho依存的に中皮細胞層内に浸潤することが報告されている細胞株である。この浸潤反応にROCKが関与しているかを検討するため、本細胞を用いて、ROCK阻害薬存在下でin vitro細胞浸潤アッセイを試みた。その結果、我々はROCK阻害薬処理によりMMl細胞の浸潤能が著しく抑制されることを観察した。また同細胞において活性型ROCKを恒常的に発現する細胞株を単離し、in vitro細胞浸潤アッセイを行ったところ、活性型Rhoを恒常的に発現する細胞株と同様に、細胞浸潤能が亢進されていることを見い出した。さらに、これら細胞株をマウス腹腔内に移植すると、移植後約11日で腹膜破腫を認めるが、浸透圧ポンプを用い、ROCK阻害薬処理すると、腹膜破腫が完全に抑制されることを見い出した。これらの結果から、MMl細胞のin vitroおよびin vivoでの細胞浸潤にはROCKの活性が不可欠であることが判明した。 2 ROCKのリン酸化基質を同定 無血清培養下での神経芽細胞腫NIE-115細胞はLPA依存的に、またRho依存的に神経突起を退縮させる。我々は、この反応にROCKのキナーゼ活性が不可欠であることを報告した。そこで、我々はこの細胞を用いて、LPA刺激にともないリン酸化レベルが冗進させ、逆にROCK阻害薬処理により、リン酸化レベルが減弱される蛋白質を2次元電気泳動法により同定した。現在、この蛋白質を精製し、解析中である。
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