新生児期胸腺摘除によって自己免疫性胃炎を発症させたマウスの胃壁、胃所属リンパ節、脾臓などに存在する活性化されたCD4陽性T細胞をセルソータによって分取し、これが産生ずるリンホカイン/サイトカインmRNAをRT-PCR法により検出・定量した。さらに、細胞質内の各種リンホカイン/サイトカインを蛍光抗体染色し、FACSアナライザーによって検出する実験系を樹立し、自己免疫性胃炎発症マウスの胃壁、胃所属リンパ節、脾臓などの細胞におけるリンホカイン/サイトカインの産生を個別細胞のレベルで解析した。その結果、CD4陽性細胞サブセットの集積様式が臓器・組織ごとに異なるものであり、胃所属リンパ節ではThl/Th2両サブセットの細胞が同数程度存在するが、炎症局所である胃粘膜では、Thlサブセットが極めて優勢であることが判明した。 次に、多孔性メンブレン上で血管内皮細胞株を培養し、単一の細胞層を形成させ、これによって培養槽を上下に分画した。この上層に自己免疫性胃炎発症マウスの各種組織に由来する活性化されたCD4陽性T細胞をおき、内皮の透過性に差があるかを、透過した細胞のサブタイプを産生ずるリンホカイン/サイトカインmRNAのRT-PCR法による検出、および細胞質内リンホカイン/サイトカインの蛍光抗体染色によって解析した。その結果、ThlサブセットはTh2サブセットに比べ効率良く活性化型血管内皮細胞株の層を透過することが判明した。この実験によって、期待されるサブセットの選択的集積を再構築する細胞培養実験系が確立された。以上の解析によって、自己抗体産生を支持・補助するTh2サブセットと胃壁障害性のThlサブセットとが選択的に集積し、棲み分けによって両サブセットの同時活性化が起こるとの仮説が検証された。
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