研究課題/領域番号 |
10670122
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林 謙一郎 大阪大学, 医学部, 助手 (40283767)
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研究分担者 |
西田 亘 大阪大学, 医学部, 助手 (80271089)
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キーワード | 平滑筋細胞 / 形質転換 / 増殖因子 / シグナル伝達 / phosphatidylinositol 3-kinasc / proicin kinase B / ERK / p38MAPK |
研究概要 |
これまでの平滑筋細胞の形質転換(分化・脱分化)の分子機構に関する研究で、PDGF、EGF、bFGF等の増殖因子の刺激により平滑筋細胞は速やかに脱分化するのに対し、インスリン様増殖因子(IGFT、IGFII)及びインスリン存在下では分化型形質が長期間維持されることを見い出し、IGF-1/IGF-I受容体の下流に位置するphosphatidylinositol 3-kinase(PI3-K)及びprotcin kinasc B(PKB/Akt)を介したシグナル伝達系が分化型形質維持に重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。本年度の研究では平滑筋細胞の脱分化の分子機構を中心に脱分化誘導と分化形質細持のそれぞれの場合のシグナル伝達系を対比させて解析を進めた。PDGF、EGF、bFGFの刺激によりmitogen activated protcin kinasc(MAPK)類(ERK、p38MAPK)が共通して活性化されるがIGF-1刺激ではMAPK類の活性化は起こらない。一方、PI3-K及びPKB/Aktの活性化はEGF及びbFGF刺激では起こらないが、PDGF刺激ではERK、p38MAPKの活性化と同様にPI3-K及びPKB/Aktの著明な活性化が認められた。さらに、ERK、p38MAPKを介するシグナル伝達系の阻害剤であるPD98059、SB203580の存在下ではPDGFによる平滑筋細胞特異的な遺伝子発現及び収縮能の欠失を起こさなかった。すなわち、ERK及びp38MAPKを介したシグナル伝達系を阻害することで脱分化誘導が抑制された。さらに、IGF-I存在下で培養した分化型平滑筋細胞にERK、p38MAPKそれぞれの上流に位置するMAPK kinasc、MEK1及びMKK6の恒常的活性化型を強制発現させるとIGF-Iの存在にもかかわらず、著しい脱分化誘導が認められた。 以上の結果から平滑筋細胞の分化・脱分化はPI3-K及びPKB/Aktを介するシグナル伝達系とERK、p38MAPKの活性化を伴うシグナル伝達系のバランスにより制御されていることを明らかにした。
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