Necdinはニューロンの発生、分化に伴って発現誘導される約43kDaの蛋白質で、necdinを強制発現した細胞は細胞周期がG1期に停止する。またnecdinは細胞周期進行を制御する転写因子E2F1と結合しその転写活性を抑制する。E2F1のdeletion mutantsを用いた結合実験よりnecdinはE2F1のC末端転写活性化ドメインに結合することがわかった。E2F1のC末端はがん抑制遺伝子産物p53のN末端10-70と相同性があり、同時にこの領域が転写活性化ドメインであることが知られている。そこで酵母Two Hybrid法およびin vitro binding系でnecdinとp53の結合を調べてみると、necdinはp53のN末端35-62の領域に特異的に結合した。 p53とnecdinの結合は、p53特異的結合配列を用いたgel-shift assayでも確認された。さらにp53によって発現が誘導されるp21/WAF1のプロモーターを用いてレポーターアッセイをおこなったところnecdinによってp53の転写活性は完全に抑制された。p53の増殖抑制作用はp21/WAF1を介すると考えられているが、necdinはp53-dependent p21/WAF1promoter activityを抑制するにもかかわらずp53とnecdinの共導入では増殖抑制作用は強調された。U20S細胞にp53を強制発現させるとapoptosisを誘導する。Necdinの共発現によりp53陽性生存細胞が顕著に増加し、p53-induced apoptosisを抑制した。p53の強制発現によりニューロンのapoptosisも誘導されることからnecdinがニューロン死の機構に関与していることが示唆された。
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