Necdinはニューロンの発生、分化に伴って発現誘導される約43kDaの蛋白質で、necdinを強制発現した細胞は細胞周期がG1期に停止する。またnecdinは細胞周期進行を制御する転写因子E2F1やがん抑制遺伝子p53と結合しこれらの転写活性を抑制する。近年ステロイドホルモン受容体など一部の転写因子がある条件下で核マトリックスに存在すること、また核マトリックスが転写やスプライシングなどの場となっていることがわかってきた。そこでnecdinがニューロンの核マトリックスに存在するかどうかをレチノイン酸処理によりニューロンに分化させたP19細胞を用いて検討した。核マトリックスの調整は通常用いられている方法により行い、細胞免疫染色およびimmunoblotでnecdinが核マトリックスに存在することが確認された。次に核マトリックス上でnecdinに結合する蛋白質を検索する目的で、分化させたP19細胞cDNAlibraryを酵母Two-Hybrid法でスクリーニングしたところ核マトリックス蛋白質hnRNP-Uがnecdin結合蛋白質として同定された。hnRNP-Uの過剰発現によってnecdinはより豊富に核マトリックスへ取り込まれ、またそれに伴ってp53も核マトリックスへ移行することがわかった。Necdinによるp53転写活性の抑制もまたhnRNP-Uと協調的に働くことから、necdin-p53複合体がhnRNP-Uを介して核マトリックスに取り込まれることがnecdinの転写抑制機構であると示唆された。
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