研究概要 |
Hic-5の関与する細胞内シグナル伝達路を解明するために、Hic-5のチロシン残基リン酸化を検討した。Hic-5と共にタンパク質チロシンキナーゼCAKβあるいはFvnを細胞に共発現すると、Hic-5のチロシン残基リン酸化が亢進したが、FAKの共発現では亢進しなかった。共発現によるHic-5のチロシンリン酸化は、細胞を高浸透圧ストレスで刺激することにより更に亢進した。Hic-5のチロシン残基60をフェニルアラニンに変異するとチロシンリン酸化は起こらなく成った。チロシン残規60がリン酸化されたHic-5には、C末端Srcキナーゼ(Csk)のSH2ドメインが特異的に結合した。CAKβの変異体を共発現して検討した所、Hic-5チロシンリン酸化には、CAKβの活性化が必須であり、また、Hic-5とCAkβの結合も必要であることが明らかに成った。CAKβによるHic-5の特異的リン酸化の結果、Hic-5の特異的リン酸化の結果、Hic-5による下流シグナル路が活性化すると推定された。 野生型の非受容体系タンパク質チロシンキナーゼ、CAKβ,は、核周囲に細胞質に存在しているが、SH3ドメインのリガンドとして働く859番のプロリンをアラニンに変えた点変異体は、核に局在した。タンパク質核外移送の阻害薬を細胞に作用すると、野生型CAKβのかなりの部分が細胞質から核に移行した。この事実は、野生型CAKβが細胞質と核との間を行き来している事を示唆する。CAKβに結合するHic-5もCAKβの核移行に伴いCAKβと共に核に集積した。核移行したCAKβの機能は、未だ明らかではないが、最近、Hic-5がandrogenreceptorのcoactivatorとして働き、androgen刺激に伴う転写を活性化すると報告されているので、CAKβはHic-5と共に核内における転写の制御などに関与すると推定している。
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