ミトコンドリアは細胞におけるエネルギー産生の場であり、また生体にとって必須の数多くの物質の合成、分解に関わっている。また、アポトーシスなどにも重要な役割を果たし、発ガン、老化に深く関与している。本研究ではミトコンドリアの制御を考える上で、細胞質に直接接している外膜の機能に着目し、外膜の溶質透過機構の中心であるポリンの性質を調べることを目的としている。本年度は 1. ヒトのポリンタンパク質を大腸菌を用いて大量に調製した。既に予備実験によって不溶性の封入体として得られていたが、これを尿素で溶解し、強陰イオン交換樹脂にて精製し、還元剤存在下で尿素を除いて、可溶性のポリンタンパク質を回収した。しかしながら現在までのところ、この標品でVoltage Dependent Anion Channel活性は確認できていない。 2. 上記ポリンタンパク質を用いてウサギのポリクロナール抗体を作製しつつある。 3. ポリンが大きな役割を果たしていると言われるmitochondrial permeability transitionの性質を調べるため、マウス肝臓のミトコンドリアを調製し、シアル酸含有糖脂質等による、ミトコンドリア膨潤の解析をおこなった。この結果特定のシアル酸含有糖脂質が生理的な細胞内カルシウム濃度範囲でミトコンドリア膨潤を引き起こすことを発見した。さらにポリンに対する直接作用の可能性について解析している。
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