ガングリオシドは神経系に多く局在し、発生や組織の分化に関与しているものと考えられている。最近、ガングリオシドGD3によりアポトーシスが引き起こされることが報告された。そこでアポトーシスのシグナル伝達において重要な機構であるミトコンドリアからのチトクロームc(cyt c)放出に対するガングリオシドの影響を調べた。 cyt cやアポトーシス誘導因子(AIF)はミトコンドリアの膜間腔にあり、細胞質中に放出される場合外膜を通過する。現在その通過に(1)ミトコンドリアポリンなどの外膜タンパク質が積極的に関与している、(2)ミトコンドリアの膨潤に伴い、外膜が受動的に破れる、の2説があるが、ミトコンドリアの膨潤を伴わず、チトクロームcの放出を誘導する系はごく少なく、前者の確実な証拠はいまのところ乏しい。 ガングリオシドはミトコンドリアに直接作用して、cyt cの放出を引き起こした。この際阻害剤を用いた実験により、のcyt c放出にはいわゆるpermeability transition poreの開口が必要であることが示唆された。さらに各種ガングリオシドを試みたところ、複数のシアル酸残基を持つポリシアロガングリオシドのみcyt c放出活性を有し、シアル酸残基が重要な役割を果たしていることが示唆された。 外膜中に存在するガングリオシドとミトコンドリアポリンの相互作用がpermeability transition poreの開口を引き起こす可能性についてさらに検討が必要である。
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