研究概要 |
我々はprogrammed cell deathの研究対象として変態過程における両生類幼生の尾の退縮を取り上げ、退縮中の尾で発現の増加する遺伝子やアポトーシス関連遺伝子をクローニングし、甲状腺ホルモンによる尾の退縮の分子機構を解析してきた。前年度に単離したアポトーシス執行遺伝子群であるXenopus Caspase family遺伝子(caspase-1,-2,-3,-6,-7,-8,-9,-10)を各々、両生類幼生の尾由来の細胞株にトランスフェクションして細胞死誘導活性を調べた結果、prodomainを持つcaspase-1,-2,-8,-9,-10の強制発現で強い細胞死誘導活性が観察されたが、prodomainを持たないcaspase-3,-6,-7では微弱な活性しか見られなかった。変態中に退縮する尾における細胞死について、発現誘導されるMatrix Metalloproteinase(MMP)によって細胞外基質が分解されることによる細胞死(murder model)が提唱されている。退縮中の尾で発現誘導されている従来報告されている2種類のMMP、新たに我々がクローニングしたものの2種類の合計4種類の遺伝子を筋芽細胞株に強制発現させたが、細胞死は起きなかった。murder modelに疑問を抱き、甲状腺ホルモンレセプターのドミナントネガティブ(TRDN)の遺伝子を細胞に過剰発現させた。甲状腺ホルモンの存在下でもTRDN発現細胞は生き残り、ホルモンの直接作用した細胞だけが自発的に死ぬsuicide modelを強く支持する結果を得た。今後、TRDN遺伝子を尾の筋細胞に注入して生体内の環境でも同様であるか検討したい。
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