本研究の目的は、両生類幼生の変態中の退縮している尾で甲状腺ホルモンにより発現誘導されるアポトーシス誘導遺伝子のクローニングである。1.アポトーシス執行遺伝子群であるXenopus Caspase family遺伝子を全てクローニングして、各々、両生類幼生の尾由来の細胞株にトランスフェクションして細胞死誘導活性を調べた。長いprodomainを持つCaspaseの強制発現で細胞死誘導活性が観察された。退縮する尾においてXenopus Caspase family遺伝子の発現は増加するが、甲状腺ホルモンで死んで行く尾由来の筋芽細胞株では増加していなかったため、Caspase遺伝子発現は尾における細胞死誘導の主な原因ではないと考えられる。2.細胞外基質の分解によって筋細胞が足場を失い、アポトーシスを起こすというmurder modelが現在、主流である。しかし、尾由来の筋芽細胞株に甲状腺ホルモンレセプターのドミナントネガテイブ(TRDN)の遺伝子を強制発現させて甲状腺ホルモンのシグナル伝達を阻害すると細胞死が抑制されることから、個々の細胞が自殺するsuicide modelが示唆された。さらに、オタマジャクシの尾の筋細胞にTRDN遺伝子とマーカー遺伝子を導入し、尾がほとんど吸収された時に、尾の切片を作製してマーカー遺伝子の発現細胞の有無を調べた。TRDN遺伝子と共に注入した時のみ、マーカー遺伝子を発現している筋細胞が生き残るので、この結果は甲状腺ホルモンに反応して自殺するsuicide modelを強く支持した。3.in vivoエレクトロポレイションを用い、オタマジャクシの尾の筋細胞にマーカー遺伝子と共に発現型cDNAライブラリーを導入し、器官培養して、細胞死誘導活性を指標としてスクリーニングしてみたが、目的の遺伝子はクローニングされなかった。退縮中の尾に発現が増加する遺伝子として今までクローニングされた遺伝子にも活性は検出されなかった。尾由来の筋芽細胞株で同様のスクリーニングして、有意に細胞死誘導活性があると思われるcDNAグループを解析中である。
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