研究概要 |
アラキドン酸の特定の炭素に酸素を添加する12/15-リポキシゲナーゼのアイソザイムは生体内に広くかつ組織特異的に発現している。この12/15-リポキシゲナーゼのアラキドン酸代謝産物が,神経細胞機能,TNFaによるアポトーシス,血管平滑筋細胞や線維芽細胞における増殖シグナルの情報伝達機構や細胞間の情報コミュニケーションに重要な役割を果たしていることが示唆されている。本研究では,このリポキシゲナーゼの細胞増殖・分化調節作用に着目し,アイソザイムの病態生理機能を明らかにすることを目的とし,初年度は以下の研究成果を得た。これまで私達はヒト血小板,ブタの白血球やラット松果体から12-リポキシゲナーゼのcDNAをクローニングしてきた。マウスでは4種類の12/15-リポキシゲナーゼアイソザイムが発現していることが報告されている。そこで,12/15-リポキシゲナーゼアイソザイムファミリーに属する8-リポキシゲナーゼのcDNAをPCR法で単離した。このcDNAを発現ベクターに組み込み,大腸菌およびCOS細胞で発現させた。この際に,N末端に6個のヒスチジンをコードする発現ベクターを利用し,発現した酵素をヒスチジンに特異的に結合するアフィニティークロマトグラフィーで精製した。精製標品を用いて,不飽和脂肪酸との反応機構や基質特異性などの酵素学的性質を明らかにした。
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