研究概要 |
1. 膀胱癌25例,前立腺癌20例,精巣腫瘍5例についてパラフィン包埋標本及び新鮮手術標本からDNAを抽出しました。同時に正常組織(主に血液)からもDNAを抽出し以下の検討を行いました。 2. 11番染色体短腕末端部(11p15)に存在するkip2,TH,IGF2,H19について遺伝子多型をPCRで検討したところ,各遺伝子座におけるヘテロの割合はそれぞれ15/50,40/50,12/50,10/50で,少なくとも一つの遺伝子座でペテロであったのは45/50でした。 3. ヘテロの症例45例のうちへテロ接合性の喪失(LOH)は5症例で認められました。LOHの証明された遺伝子座はkip2,TH,IGF2,H19でそれぞれ1/5,5/5,1/5,2/5でした。 4. kip2遺伝子の変異についても検討を行っており,30症例について10対のPCRプライマーでkip2遺伝子を数百bpずつ増幅してkip2遺伝子全体について正常と腫瘍をSSCP法で比較しました。30例中10症例に少なくとも1カ所で腫瘍に特異的なパターンを認め,これらについてはDNAシークエンスを行って詳しく検討しているところです。 5. kip2インプリンティングについては新鮮手術標本が得られ且つkip2におけるヘテロが証明された1症例について検討いたしましたが,2つのアレルの一方からのみの発現が認められ腫瘍においてもインプリンティングが保たれていました。ただ,両親の遺伝子型が得られず発現アレルの由来については結論できませんでした。 6. kip2遺伝子のメチル化についてメチル化感受性制限酵素を用いたサザン解析で検討しました。kip2の5'領域をプローブとして用いた結果では腫瘍組織,正常組織いずれにおいても低メチル化状態と考えられる結果を得ました。腫瘍特異的なメチル化の変化は現在の所検出されていません。
|