研究概要 |
Fasリガンド(FasL)はその受容体Fasに結合しアポトーシスを誘導する。FasLはタイプII蛋白質として合成されるが、ある種のmetalloproteinaseによって切断される。この可溶化の役割、すなわち膜型と可溶型のFasLどちらがアポトーシス誘導活性を持つかを検討した。すなわち、ヒトFasLのmetalloproteinaseによる切断部位に変異を導入し、可溶型になりえないFasLを発現する細胞株を樹立し、その細胞のアポトーシス誘導能を可溶型FasLのそれと比較した。その結果、Fasに感受性の高い活性化T-リンパ球細胞とは異なり、マウス肝細胞やnaiveT-リンパ球細胞などは、膜結合型FasLによってのみアポトーシスを引き起こした。以上の結果はFasLは本来、膜結合型として作用し、可溶化によりその活性がdown-regulationされることを示している。そして、FasLと同一のファミリーに属するTNFを切断する酵素(TACE,TNF-alpha converting enzyme)の解析からTACEはFasLの切断には関与していないこと、TACEが作用するには、その基質TNFと同一の細胞で発現される必要があることを示した。ところでFasLを構成的に発現する腫瘍細胞をマウスに移植するとinflammationが誘導され腫瘍は速やかに除去された。この際、培養液中には顕著なIL-1βの蓄積が認められ、このIL-1βの放出はカスパーゼの阻害ペプチドz-VADによって阻害された。一方、IL-1を欠質したマウスにFasLを発現する癌細胞を移植したところ、野生型のマウスに比べ好中球によるinflammationは顕著に抑えられた。以上の結果は好中球がアポトーシスを起こして死滅する際に活性化されるcaspaseがIL-1βの産生を誘導し、これがinflammationに関与していることを示している。
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