脳内誘導型ヒスタミンの病態生理学的意義

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10670141
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 大和谷 厚 大阪大学, 医学部, 教授 (30116123)
• 研究分担者: 山本 由美子 大阪大学, 医学部, 助手 (60301264)
• キーワード: ヒスタミン / マイクログリア / リポ多糖 / インターロイキン1β / ヒスチジン脱炭酸酵素 / 肥満細胞 / プロテインキナーゼC

研究概要

脳内におけるヒスタミン産生細胞には、ヒスタミンニューロンと肥満細胞が知られているが、われわれはこれらの他にサイトカインによってヒスタミン産生が誘導される第3の細胞種の存在を示唆してきた。本研究はこの責任細胞を同定しその生理的・病態生理的意義を明らかにすることを目的としている。
昨年度は株化マイクログリア細胞を用い、RT-PCR法によってヒスタミン合成酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)のmRNA検出を試みるとともに、酵素活性を測定することにより、使用した2種のマイクログリア株化細胞においてHDCのmRNAの発現をRT-PCR-サザン法により確認し、さらに、ラット胎児脳初代培養細胞と同程度のHDC活性を有していることを確認した。
このように第3のヒスタミン産生細胞がマイクログリアであることが明らかとなったので、本年度はこのHDC誘導機構を明らかにする目的で、マイクログリアでのHDC誘導への蛋白合成阻害薬、ホルボールエステル、カルシウムイオノフォアの及ぼす影響を検討した。リポ多糖(LPS)投与後のHDC活性の上昇はサイクロヘキシミドおよびアクチノマイシンDで蛋白合成を阻害することにより抑制され、また、ホルボールエステル(TPA)あるいはカルシウムイオノフォア(A23187)の投与のみでもHDC活性が上昇した。これらの結果から、LPSによるHDC活性の上昇は蛋白合成を介したもので、プロテインキナーゼCの系が関与していることが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] S.Harusawa,T.Imazu,S.Takashima,L.Araki,H.Ohishi,T.Kurihara,Y.Yamamoto,A.Yamatodani: "Synthesis of Imifuramine and its stereoisomers exhibiting histamine H3-agonistic activity"Tetrahedron Lett.. 40(13). 2561-2564 (1999)
• [文献書誌] J.Chen,O.Ikeda,T.Hatasa,A.Kitajima,M.Miyake,A.Yamatodani: "Oxidation of NO mediated by water-soluble iron porphyrin"Electrochem.Commun.. 1. 274-277 (1999)
• [文献書誌] T.Morimoto,Y.Yamamoto,J.I.Mobarakeh,K.Yanai,T.Watanabe,A.Yamatodani: "Involvement of the histaminergic system in leptin-induced suppression of food intake"Physiol.Behav.. 67(5). 679-683 (1999)
• [文献書誌] S.Harusawa,T.Imazu,S.Takashima,L.Araki,H.Ohishi,T.Kurihara,Y.Sakamoto,Y.Yamamoto,A.Yamatodani: "Synthesis of 4(5)-[5-(aminomethyl) tetrahydrofuran-2-yl or 5-(aminomethyl)-2,5-dihydrofuran-2-yl] imidazoles by efficient use of PhSe group: Application to novel histamine H3-ligands"J.Org.Chem.. 64. 8608-8615 (1999)
• [文献書誌] Zhong-qi Li,Y.Yamamoto,T.Morimoto,J.Ono,S.Okada,A.Yamatodani: "The effect of PTZ-kinding on the extracellular glutamate and taurine levels in the frontal cortex of rats"Neurosci.Lett.. 282(1-2). 117-119 (2000)