DMAHP/Six5遺伝子が筋緊張性ジストロフィー(DM)の発症にいかに関与するのかを分子レベルで明らかにすることを最終目的として、次の点を明確にした。 (1)骨格筋、心筋、マウス胚でのSix5の転写開始点を同定し、各組織に共通の開始点2箇所と初期胚(E11)特異的な開始点を明らかにした。これらの開始点はいずれもCTGリピートの下流であり、転写されたmRNA中のCUGリピートによる、スプライシングや翻訳の異常によって、DMの発症が起こり可能性を排除した。 (2)P19細胞における転写制御エレメントを解析し、3箇所のSp1/Sp3が正の制御エレメントであること、ほかに2箇所の負の制御エレメントが存在し、そのうち1箇所は特異的な因子が結合することを見出した。 (3)DMAHP/Six5遺伝子産物によって制御される標的遺伝子群の同定のため、強力な転写活性化ドメインVP16および転写抑制化ドメインEngを融合させた活性化型Six5および抑制化型Six5を作成した。活性化型Six5はよく機能したが、抑制化型は、期待した効果がみられなかった。現在、活性化型Six5をアデノウイルスに組み込み、P19細胞やC2C12細胞に導入した結果誘導がみられる遺伝子をマイクロアレーにて同定している。 (4)Six1、Six4の標的遺伝子として同定されたMyogeninプロモーターはSix5によっても活性化される。SixのコアクチベーターEyaのうちEya3とSix5の組み合わせが、Myogeninプロモーターをもっとも効率よく活性化した。このことは、Six5の発現低下により転写コアクチベーターEyaとの共同作用が減弱し、Myogeninの発現低下を来した結果筋肉の未成熟が起きるというDMの新たな発症機序の可能性を示唆するものである。
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