本研究は、カテプシンLがv-Ha-ras遺伝子でトランスフォームした細胞では、そのmRNAが増大すると同時に前駆体であるプロカテプシンLを細胞外に大量に分泌するようになるが、そのリバータント細胞ではmRNAが増大していないにもかかわらず、プロカテプシンLを大量に分泌し続けるという事実から、v-ras遺伝子によるトランスフォーメションにはカテプシンL遺伝子を活性化する経路とプロカテプシンLのリソソームへの細胞内輸送を細胞外に分泌する方向に変更する経路の2つの情報伝達機構が同時に働いているという観察から始まっている。しかしながら、細胞内輸送に関与するGタンパク質のうちリソソームへの輸送に深く関与しているRab7の持続性活性型および優性不活性型をNIH3T3細胞に安定発現する細胞の確立を目指したが細胞株の分離はできなかった。現在、ドクシサイクリンを用いた調節発現細胞株の分離を目指している。 本研究ではアミノ末端に対するペプチド抗体を用いることにより、カテプシンLが生体内でも試験管内で証明されたのと同様に31kDa型、30kDa型をへて成熟型酵素に変換することを明らかにした。さらに培養細胞にバフィロマイシンA1処理をすることによりリソソームプロテアーゼを分解し、バフィロマイシンA1を除去後プロテアーゼ阻害剤存在下で培養することによりリソソームプロテアーゼのプロセシング酵素を解析する系を確立し、カテプシンB、D、LおよびレグマインがカテプシンB以外のパパイン型システインプロテアーゼによりプロセシングされることを明らかにした。この事実はリソソームに存在するカテプシンB、D、Lおよびレグマインは同一のプロセシングプロテアーゼにより成熟酵素化をコントロールされている可能性を示唆している。
|