昨年度に作製したヒト・トポイソメラーゼ遺伝子を発現する組み替えアデノウイルスを用いて薬剤耐性株に対して耐性が克服されるかのin vitroでの実験を行った。 用いた耐性株はヒト・乳癌細胞株のエトポシド耐性株であるMDA-VP16とその親株で耐性のないMDA-Parent細胞株。ヒト・白血病細胞株でエトポシド耐性のK562-VP細胞株とその親株のK562細胞株、アドリアマイシンの誘導体であるMXに対しての耐性株でエトポシドに対しても交差耐性を示しトポイソメラーゼ遺伝子の発現低下を認めているK562-MX細胞株。マウスの乳癌細胞株のFM-3Aとそのエトポシド耐性株であるFVPを用いた。このマウスの細胞株はin vivoでの実験系において使用する組み替えアデノウイルスベクター自体による免疫反応による抗腫瘍効果を検討するために使用した。 現時点(2001年2月末日)においてMDA-VP16はトポイソメラーゼ遺伝子の発現低下を認め、その発現低下は組み替えアデノウイルスの投与により遺伝子の発現増強、核内のトポイソメラーゼ蛋白の増加が認められた。エトポシドを組み替えアデノウイルスを感染させた耐性株に投与したところエトポシド-トポイソメラーゼ蛋白-DNA複合体の量がコントロール群(アデノウイルス未投与、beta-galactosidase遺伝子を発現するアデノウイルス投与群)に比べて有意に増加し、エトポシドに対しての薬剤感受性も増強された。現在、他の細胞株に対しても同様の実験を行いエトポシドや他の交差耐性を示していた薬剤に対して感受性が増強するかを検討している。
|