研究課題
本研究は、H.pylori感染症におけるH.pyloriの宿主細胞へのバクテリアー宿主細胞間接着を介した蛋白質チロシンリン酸化反応を伴った細胞内シグナル伝達機序とその生理的意義を解明することを目的とし、細胞内シグナル伝達における蛋白質-蛋白質の分子間相互作用の組織機序の解析と病原性遺伝子島(PAI)に存在する遺伝子の解析からH.pylori感染症における病態の分子機構明らかにしたいと考えている。今回私たちは、H.pyloriの胃上皮ガン細胞への感染において、H.pylori菌株の違いによる145kDaおよび130-135kDaの蛋白質のチロシンリン酸化の多様性があるこを見出し、それらの蛋白質のImmunoblot解析、および35S-Methionine放射性ラベル細胞実験、さらに、その145kDaのチロシンリン酸化蛋白質のアミノ酸シークエンサー解析による部分アミノ酸配列の決定による蛋白質同定および遺伝子変異株を用いたImmunoblot解析を行なった。その結果、H.pylori感染によりチロシンリン酸化された145kDaおよび130-135kDaの蛋白質は、宿主細胞由来ではなく、H.pyloriのimmunodominant cytotoxin-associated antigenでH.pylori自身が分泌するCagA蛋白質であることを初めて証明した。このチロシンリン酸化CagA蛋白質は感染宿主細胞のLysates中でのみ検出されたことから、H.pylorの推定されているTypeIV蛋白質分泌装置から宿主細胞内へ放出され、細胞内へ放出されたCagA蛋白は宿主細胞由来のチロシンキナーゼによってリン酸化されているものと考えられ、私たちはin vitro kinase assayにおいて、non-receptor protein tyrosine kinaseであるsrc kinaseおよびEGF receptor protein tyrosine kinaseによってCagA蛋白質がリン酸かされることを明らかにした。(J.Exp.Med.2000,Vol.191,No.4,593-602)。さらに、私たちは、推定されるリン酸化部位のペプチドを抗原をしたCagAのリン酸化抗体の作成に成功し、その抗体を用いて、H.pylori感染後、リン酸化CagAは細胞骨格蛋白のα-アクチン集積とcolocalyzeし、リン酸化CagA蛋白質は宿主細胞の細胞骨格蛋白質のクロストークに関与していること、およびCagAと共沈してくる蛋白質を得ており、CagA蛋白質が増殖シグナルに関与していることを示唆するevidenceを得ている。
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