マウスγ-サルコグリカン(SG)遺伝子のN一末端側細胞質領域と膜貫通領域をコードするエクソンを欠失させた遺伝子ターゲッティングベクターを作成しマウスES細胞に導入し、相同組換え体を得た。これらの相同組換え体からキメラマウスを作成し、C57BL/6雌マウスとの交配によりES細胞由来のへテロ変異マウスを得て、ヘテロ変異マウス間の交配によりホモ変異(γ-SG-/-)マウスを作成した。γ-SG-/-マウス筋においてγ-SG分子発現の欠損を確認した。ヘテロ変異マウス間の交配により得た子の4週令における遺伝子型はメンデル分離比に近く、γ-SG-/-マウスは4週令までは致死でないと考えられた。γ-SG-/-マウスは発育、繁殖、姿勢および歩行は正常で、各週令の体重は、正常型マウスと同等であった。γ-SG-/-マウスは、10週令以降で四肢近位部が肥大した体型を示し、金網よじ登り試験では筋力低下が認められた。Hematoxylin-Eosin染色では、横隔膜・骨格筋の広い範囲に壊死、再生像がみられた。7カ月令では筋の肥大と筋組織の壊死、再生、線維化がみられた。この結果をmdxマウスと比べると、γ-SG-/-マウスは早い週令で筋の肥大と線維化を示した。γ-SG-/-マウスの血清クレアチンキナーゼ活性は、正常型マウスの百倍以上に上昇していることと、Evans blue dyeを用いた生体染色により横隔膜と骨格筋にEBD染色性筋線維が見られたことからγ-SG-/-マウスの筋線維膜透過性の異常が示唆された。 筋線維膜上の分子構築の免疫染色法による解析では、γ-SG-/-マウス骨格筋ではγ-SGのみならず他の全てのSG分子とサルコスパンの著しい減少を示し、ヒトサルコグリカノパチーと類似の所見を示した。
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