研究概要 |
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に類似の臨床経過をとるサルコグリカノパチー(SGP)は、サルコグリカン複合体の4種のサブユニットのいずれかひとつの遺伝子異常が原因であることが知られている。我々はこれまでにγ-SGPのモデルマウスとして、γ-サルコグリカン欠損(GSG-/-)マウスを遺伝子ターゲッティング法により作成した。GSG-/-マウス骨格筋では活発な筋線維壊死と再生を示し、57週令では筋組織の線維化と脂肪組織への置換が見られ、進行した筋ジストロフィーの病理像に類似の所見であった。また、12週令以降、四肢筋、肩甲部、腰部筋の肥大と、筋力低下が著明となった。GSG-/-マウスの前脛骨筋、長指伸筋、長腓骨筋、短腓骨筋の重量は、17,21,57週令で、対照マウスに比べ約1.5倍に増加していた。さらにGSG-/-マウス前脛骨筋中腹の横断切片を作成し、抗ラミニンalpha2抗体により免疫染色を行い、顕微鏡画像データから前脛骨筋横断面のすべての筋線維数を計数したところ、対照マウス筋の筋線維数の約2倍に増加していた。肥大筋の横断面、縦断面を観察すると、筋線維のほとんどは中心核線維で、fiber branchingの像も多く見られた。下腿の肥大は、DMDならびにSGPの特徴的所見であり、これまでは肥大筋の組織所見として線維化と脂肪沈着が報告されていたものの、その病態の詳細はこれまで明らかにされていない。本研究において、GSG-/-マウスの肥大筋の組織を経時的に観察することにより、筋肥大は、主に中心核をもつ再生筋線維数の増加とfiber branchingによるものと考えられた。
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