研究課題/領域番号 |
10670151
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研究機関 | 国立小児病院 |
研究代表者 |
綱脇 祥子 国立小児病院, 国立小児医療研究センター・感染症, 研究員 (00211384)
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研究分担者 |
藤井 博匡 東京都臨床医学総合研究所, 炎症, 研究員 (70209013)
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キーワード | 活性酸素 / 活性酸素生成酵素 / NADPHオキシダーゼ / 慢性肉芽腫症(CGD) / cytochrome b558 / gp91 / フラビン |
研究概要 |
活性酸素生成酵素(NADPHオキシダーゼ)は、NADPHから電子を受け取り、酸素を一電子還元してO^-_2を生成する電子伝達系である。しかし、その酸化還元中心であるcytochrome b558に関しては、多くの疑問点が残っている。本年度は、先天的に活性酸素生成能を欠く慢性肉芽腫症(CGD)患者の確定診断を行う中で、議論の的になっているフラボシトクロム説に確証を与える初めての症例を見出すことが出来た。この説は、cytochrome b558のgp91サブユニットがその分子内にヘムと同時にFADを持つとするものである。しがし、他のフラビン酵素とのホモロジーから推定されただけであり、直接の証明はない。CGD患者の多くは、gp91に於ける変異症であが、その殆どが蛋白質自身の欠損に繋がるX91^0型であるため、gp91の機能解析は進んでいない。我々が見出した患者は、アポ蛋白質としてのgp91は存在するが、O^-_2生成活性がゼロである極めて珍しい症例であった。シークエンシングの結果、患者は、gp91のHis338がTyrに置換したミスセンス突然変異であり、この位置は、フラボシトクロム説に於ける仮想FAD結合領域に存在していた。そこで、高感度ルシフェラーゼ化学発光法を開発して、患者細胞膜中のFAD含量(特殊化した好中球では大部分gp91を反映している)を測定した。その結果、患者細胞膜中のFAD含量は、gp91が完全に欠損しているX91^0型のバックグラウンドとしてのFAD含量と同じであった。この事実は、患者のgp91ではFADが枯渇していることを示している。次に、試薬FADを添加した再構成実験を行っても、患者のin vitro-〇^-_2生成活性は回復しなかった。以上の結果は、His338がgp91のフラビン酸化還元中心にとって重要な残基であること、つまり、フラボシトクロム説を初めて証明したことになる。
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