研究概要 |
腫瘍発生のごく初期における免疫寛容の機構を解明するために、大腸癌の手術およびEMR検体、腺腫内癌・高度異型腺腫・中等度異型栓腫・軽度異型腺腫のEMR検体各10検体合計60症例を用いて抗原提示関連分子(MHC,TAP,HSP72,Calnexin,Grp94)の発現変化を検討した。 1) 免疫組織化学的検討では、市販の抗MHCクラスI抗体2種類及び抗TAP抗体がホルマリン固定標本では全て症例で反応せず、各種抗原賦活法によってもごく微弱な陽性像をみるのみで、判定困難であった。平成11年11月より米国Roswell Park Cancer InstituteのFerrone教授との共同研究が実現し、ホルマリン固定組織標本においても良好に反応するMHCクラスI抗体を入手でき、現在全症例で再検討している。 HSP72、Calnexin、Grp94の各分子は、正常細胞・腺腫細胞・癌細胞となるにしたがい発現増強を認めた(投稿中)。 2) 大腸癌と大腸腺腫各5症例を用いてin situ RT-PCRによりMHCクラスI(HLA-A,B,C)各遺伝子の定量化を試みた。発色法ではホルマリン固定標本・凍結標本・AMeX固定標本各症例及び同一標本上の正常粘膜上皮と癌細胞で明らかな発現の差異は検出できなかった。 3) p53の第6・7・8エクソンに関するPCR-SSCPを行い、一部の症例において異常を確認できたが、いずれも正常細胞との差異が無いことよりgerm lineでの異常が示唆された。 さらに、大腸癌以外の悪性腫瘍におけるMHCクラスI抗原発現を上顎癌および食道扁平上皮癌を用いて免疫組織化学的に検討したところ、上顎癌での発現減少を確認出来た(Ferrone教授との共同研究として投稿中)。
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